稜線山岳会は山登りを志す人を支援します。
 
    山岳部におけるスポーツすなわち山登りの魅力は、ルール・制約条件が所与でないということです。 山登りをするあなたがルール・制約条件を設定し、そのなかで行動するというきわめて知的で創造的なスポーツです。

  スポーツの多くは、人工物環境の中や一定の時間内で、ルール・制約条件に基づいて、試合に勝つための行為を行います。山登りは、風雨、降雪・雪崩、落雷、濃霧、増水、地形変化・ルート崩壊 といった予測がままならない自然環境下で、ルール・制約条件が定まらない状況で意思決定を行い、活動するスポーツです。それが山登りの最大の魅力です。

  ルール・制約条件が与えられない時には解は不定状態になります。不定状態では意思決定の選択肢が無限になり、一意に行動を決められないため、把握した情報からルール・制約条件を設定し、選択しうる解の範囲を明確化し、その中で解を模索し、最適な行動を意思決定しなければなりません。

  スポーツの場合、勝ち負けや策の成功・不成功を別にすれば、どのような行動をするのかという問題が与えられ、それなりの体力と技術・技能を使えば、行動ができます。スポーツの多くは現在状況下と少し先の将来時点においてどう行動するのかを問うものが多く、将来といっても長くとも数時間程度を見通しているものにすぎません。山登りは少なくとも数時間は必要であり、実際には数日間から数十日を見通して問題を解決していくことが求められます。将来を見通した問題とは、誰かに与えられる問題ではなく、当事者自身が将来のルールや制約条件を設定し、問題を解いていかねばなりません。山登りでは、この将来発生するであろう問題を取り巻くルール・制約条件を規定する知力と創造性が問われるのです。

  山登りでは、気象の変動や不測の事態の発生を予期できないことがあり、他のスポーツと比べても現在の問題も見えにくく、問題の解き方が見えませんし、最も注意を払うべきリスクへの対応についても準備できるものと準備できないものもあります。したがって、見えてこない問題そのものを考え、将来に渡って全体問題を明確化し、発生するリスクを最小にし、目的達成を最大にするよう図っていく必要があります。将来という時点には誰も達することはできないことは自明なので、山登りは、当面の問題を解くことに加えて、その時点で、気象動向、仲間の身体状態、各種ロジスティック状況等を読むことで、見えない将来のルール・制約条件を考え、それらを新たな問題として受容し、時々刻々と解決を図っていくスポーツそれが山登りなのです。

  ルート状況、天候の動向、メンバーの体力・気力、装備品・食料等の残存状況等をデータとして読み、過去・現在の状況から将来を予測します。同時に、登山計画の目標達成に向けた諸状況をコンテキスト(文脈)として読み、将来から現在を予見します。これら予測と予見の差異を分析し、設定したルール・制約条件を見直し、さらにリスクを考慮しつつ最適な行動を即興的に展開するスポーツです。 また、行動中には打開困難なことや不条理なことも発生します。とくに自然は所与のものとして受け入れざるをえないことが多いことを知らしめ、自然への畏怖を身体知として学習できるスポーツでもあり、人工物環境の中で実施されるスポーツとは大きく異なっています。

  山登りは、リスクに耐える体力・気力は当然必要となりますが、登山目標の仮説検討、登山計画の作成、装備の選択、情報連絡、指揮・命令の伝達、ルートファインディング、調理、資金計画、ロジスティクスの管理・輸送、観天望気、気象図作成、リスク評価、状況における意思決定、個人の自立、自己評価、仲間との役割分担・協調・情報共創・相互支援、他者への指導・支援といった多様なソリューション行為が求められます。

  問題を解くこと、すなわちソリューション行為はリスクの削減に寄与します。山登りに向けた体力・気力・知力を獲得する努力への確信が安全・安心を約束してくれます。リスクは絶対的な存在であったり、大きく立ちはだかり、超えられないものではなく、あなた自身がリスクを相対化し、小さくし、克服していくものです。社会のシステム化が進み、リスクを排除した誰にでも確実な安全策をとることが一般的ですが、山登りにおけるリスクへの肉薄は安心であるための認識知に加えて身体知を育て、状況に応じた有効で適切な安全策の選択と実行に役立ちます。

  山岳での活動は安定した環境の下で数時間で終了することもありますが、多くは不安定な自然の下で数日間から数十日間続きます。また、行動する場所は山域で広いのですが、生活するテントは小さく狭く、その中で信頼関係や自律的な人間関係を醸成し、自己を抑えると同時に自分に課せられた責任を果たすためのリーダーシップの発揮やリーダーの考えを汲んだ期待に応えるための行動をすることが求められます。また、リーダーの指示を絶対視するのではなく、客観的に評価し、時には改善に向けた意見を主張し、ある時には諫言することも必要です。また、最終的には自己責任に帰すことから、場合によってはリーダーと決別するという選択肢をとることもあるかもしれません。山登りという行為は自己責任において行われるスポーツであることから、初心者であっても参加する個人は単なる構成員ではなく、自律した個人であることが求められます。これは社会における人間活動そのものなのです。

  社会のシミュレーションを学生時代に体験させてくれるのが山登りです。このような山登りで得た経験、学習能力、技能・技術・知識、リスク評価能力、指導力を社会で役立ててください。学生生活と社会人生活は断絶したものではなく、連続しているのです。

  学生時代を一生の思い出を残す期間とするために「楽しい」と見受けられるアウトドア活動に取り組み、コマーシャリズムやマスコミが作った価値観や予定調和した根拠のない意味付けを得るのではなく、山登りを通して、いつの日か自分で意味付けをすることが重要であると考えます。 山登りの意味こそ所与のものではなく、いくら探しても見つからないでしょう。行動を決定する際にルール・制約条件を設定したように、山登りの意味は、いつの日かあなた自身で創り出すものなのです。

  稜線山岳会はこのような山登りを志す人を支援します。こんな山岳部に入りませんか。
  海外を視野に入れて、四季毎にオールラウンドな山登りに取り組み、学生生活の中に人生を形づくる点を印し、あなたの社会生活に繋げていってください。

  以上は、80年にわたって在籍したOB全員が「山岳部に所属した」という喜びや誇りの所以でもあります。

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  このページに来た皆さんもこのスピーチをご覧下さい。人生に意味を創り出すことはどういうことか考えさせてくれます。 映像版とテキスト版があります。
 
  アップル社創業者スティーブ・ジョブ氏のスタンフォード大学卒業式スピーチです。
山登りには人生に繋げていけるものが多く得られます
     
 
 
 
 
 
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